システム農学
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研究論文
ため池における利水容量の転用による洪水調節容量の創出
-東広島市六道池における検討-
吉迫 宏小川 茂男
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2009 年 25 巻 1 号 p. 63-70

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抄録

広島県東広島市の六道池において、2004~2006 年度にかけて貯水位の連続観測を行い、利水容量の一部転用による洪水調節容量創出の可能性を検討した。まず、観測した貯水位から貯水率を算出する方法を示した上で貯水率を求め、貯水率と降水量の関係を検討した。この結果、取水期間の前半が小雨であった2005 年においては、50%近くまで貯水率が低下した期間が見られたものの、3 ヶ年を通じた取水期間総日数の86%は貯水率70%以上であり、受益面積内の水稲作付面積の減少によって利水容量に余裕が生じていることが明らかになった。利水転用による洪水調節容量の創出は、梅雨期以降を対象として洪水調節容量の設定期間始期を6 月1 日とし、取水期間終期である8 月12 日までの73 日間を検討期間とした。検討においては、ため池貯水量を直接解析の対象とし、取水に伴う貯水率の減少度合を求め、検討期間中の貯水率変化のシミュレーションを行い、検討期間始期の要貯水率を求めた。また、1/10 確率の渇水年における検討期間中の降雨による貯水率回復量を求めた。これらの結果から、六道池においては、将来的に受益水田内の水稲作付面積が拡大した場合においても、水田の水源計画で定める計画用水量に相当する利水容量を確保した上で、下流河川に対して洪水緩和機能を発揮するために必要な洪水調節容量を確保し得ることが明らかになった。

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© 2009 システム農学会
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