システム農学
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総説
食料安全保障とは何か
―日本と世界の食料安全保障問題―
大賀 圭治
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2014 年 30 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

「食料安全保障」という政策用語は、1970 年代の世界的な食糧危機の中で使われはじめ、1980 年代にFAO などの場で、日本が主導して、「食料安全保障」についての論議が世界的に進み、1996 年の世界食料サミットでは「食料安全保障」が統一テーマとなった。日本の食料安全保障は、食料自給率の低下、つまり食料供給の海外依存の深まりの下で、国内食料供給の維持・向上と輸入食料の安定確保を課題としている。ヨーロッパの食料輸入国も日本と同様に国内生産の振興、緊急時における需要管理(配給)制度などによって食料危機に対応する食料安保の態勢をとっている。アメリカやEUのような食料輸出国・地域でも、食料不足の事態に対処する手段を制度化している。食料問題が最も深刻な後発途上国の食料問題は、貧困問題解決への国際協力のなかで取り組まれている。世界的な食料需要の増加と地球温暖化による食料・農産物市場の不安定化に対処するため、2011 年G20カンヌ・サミットでは、作物生産予測や気象予報を改善するため、リモートセンシングを活用した国際ネットワーク、「世界農業地理モニタリングイニシアティブ」の計画を進めることが決議された。このような食料安全保障の問題を解決するためのツールとして、リモートセンシングを基礎とする農業情報システムの活用が世界的に期待されている。

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