2021 年 37 巻 2 号 p. 21-28
地力ムラや生育ムラに応じた農地管理を行うため、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による空撮画像を活用した土壌理化学性の分布推定が注目されている。関連研究として、森下・石塚(2020)は圃場内で実測した数十点の土壌水分データを拡張することで機械学習モデルを構築し、UAV画像から圃場内の土壌水分分布を高精度で推定できる手法を提案した。同手法が土壌水分だけでなく他の土壌理化学性指標にも有効であることを確認できれば、圃場管理や施肥設計への活用が期待される。そこで本研究では、UAV画像を用いた土壌理化学性の分布推定において、実試料の分析データを拡張することで機械学習(ランダムフォレスト回帰)の適用を試みるとともに、従来法(重回帰)と比較することで同手法の有効性を検証した。すなわち、UAVで観測したマルチスペクトル画像、熱赤外画像、DSM(Digital Surface Model)画像のピクセル値を説明変数とし、単一圃場内で採取した36点の土壌試料の土壌理化学性分析値(粒径組成、全炭素量、全窒素量、pH(H2O)、電気伝導度)についてランダムフォレスト回帰モデルを構築した。そして、同様のデータセットから構築した重回帰モデルの推定精度と比較することで、データ拡張と機械学習の導入による精度向上への効果を検証した。ランダムフォレスト回帰による推定精度(テストデータに対する決定係数:0.54~0.85)は、いずれの項目においても重回帰モデル(決定係数:0.19~0.49)より高かった。このことから、UAV画像による土壌特性の空間分布推定において、グラウンドトゥルースのデータ拡張による機械学習アルゴリズムの導入は有効であることが示唆された。また、作付期間中の生育状況と各土壌特性の推定分布の対比から、生育ムラの要因も考察が可能であった。したがって、本研究で実施した土壌特性の空間推定手法には、圃場管理の効率化への貢献が期待できる。