システム農学
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気温の季節変化の7類型に対する牧草生育量の予測:根釧地方の例
塩見 正衛秋山 侃袴田 共之森永 慎介芝山 道郎
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1991 年 7 巻 2 号 p. 11-23

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抄録

北海道根釧地方の牧草生育期間は標準的には4月から10月であるが、それは年々の気象条件によって様々に変化する。そのような年次間の気象の季節変化をいくつかの類型に分け、既に作られている数理モデルを利用して、それぞれの類型に対応した牧草量の生長を計算した。現段階では気象の正確な長期予測は不可能だけれども、気象の類型を予め言い当てられる可能性はあり、従ってそれぞれの類型に応じた牧草量の予測の計算も可能になる。1.北海道立根釧農業試験場では、1928年から1989年まで62年間の気温、降水量などに関するデータを継続して記録している。これらの変数のうち牧草生育期間である4月から10月までの旬別平均気温を用いて、k-means法による数値分類を行い7つの気温変化の類型を作った。2.塩見らは栃木県西那須野町における牧草生長の経時的変化を表すモデルを作っているが、これを根釧地方を対象にしたモデルに改訂した。このモデルにより、7つの気温の類型に対応した牧草量の経時的変化を計算した。なお、この計算では5月10日から10月7日までヘクタール当り2頭、合計918.5kgの牛を放牧していると仮定した。3.この牧草量の経時的変化にロジスチックモデルを当てはめて、生長係数rの経時的変化を7つの気温の類型それぞれに対して計算した。このrの7つのシリーズを用いると、根釧地方における任意の気温類型に対してロジスチックモデルにより牧草量の経時的変化を予測することができる。ロジスチック式は次の通りである:dx/dt = rx(1-x/K)。ここに、Kは最大可能な牧草量、xは時刻tにおける牧草量である。このような簡単な式による予測は農家や農業団体にとって有効に用いられるであろう。

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