システム農学
Online ISSN : 2189-0560
Print ISSN : 0913-7548
ISSN-L : 0913-7548
7 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
投稿論文
  • 二宮 正士, 和住 洋一郎, 荻野 圭一, 重盛 勲
    1991 年 7 巻 2 号 p. 2-10
    発行日: 1991年
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    汎用35mmカメラで撮影されたカラースライドと白黒赤外写真を画像解析することで対象物の濃度値を計測し、ダイズ個体群の生体量を推定することを試みた。濃度値は対象個体群のデジタル画像の持つ濃度情報(階調値)をもとに求めるが、各画素の持つ情報は本来の濃度情報に比べ、写真撮影、写真のビデオ化、三色分解(アナログRGB化)、デジタル化などの信号変換を経て非線形的に歪められているのが普通である。そこで本研究では対象個体群撮影時に多階調のグレースケールも撮り込み、最終的に得られたデジタル画像をグレースケールの情報を元に標準化することでその歪みを補正し、デジタル画像の階調値と本来の濃度値の関係を線形化して対象領域の平均濃度値を求めた。1回の撮影でカラースライドをビデオ化しさらにアナログRGBにデコードして獲得した3種類の異なる可視スペクトル領域に対応するデジタル画像と、白黒赤外フィルムからの近赤外領域に対応するデジタル画像の計4枚を得、4種類の濃度値が計測された。以上の方法でダイズ3品種、3水準の栽植密度、4段階の生育ステージについて対象領域の平均濃度値を求めた。その結果、濃度値の指数変換値やそれらの関数と葉面積指数(LAI)、生全重、乾全重、乾葉重との間に線形関係が見いだされた。それはこれまでスペクトルメータを用いて行なわれた同種の実験の結果と一致し、本方式によってもそれら個体群生体情報を推定しうることが示唆された。
  • 塩見 正衛, 秋山 侃, 袴田 共之, 森永 慎介, 芝山 道郎
    1991 年 7 巻 2 号 p. 11-23
    発行日: 1991年
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    北海道根釧地方の牧草生育期間は標準的には4月から10月であるが、それは年々の気象条件によって様々に変化する。そのような年次間の気象の季節変化をいくつかの類型に分け、既に作られている数理モデルを利用して、それぞれの類型に対応した牧草量の生長を計算した。現段階では気象の正確な長期予測は不可能だけれども、気象の類型を予め言い当てられる可能性はあり、従ってそれぞれの類型に応じた牧草量の予測の計算も可能になる。1.北海道立根釧農業試験場では、1928年から1989年まで62年間の気温、降水量などに関するデータを継続して記録している。これらの変数のうち牧草生育期間である4月から10月までの旬別平均気温を用いて、k-means法による数値分類を行い7つの気温変化の類型を作った。2.塩見らは栃木県西那須野町における牧草生長の経時的変化を表すモデルを作っているが、これを根釧地方を対象にしたモデルに改訂した。このモデルにより、7つの気温の類型に対応した牧草量の経時的変化を計算した。なお、この計算では5月10日から10月7日までヘクタール当り2頭、合計918.5kgの牛を放牧していると仮定した。3.この牧草量の経時的変化にロジスチックモデルを当てはめて、生長係数rの経時的変化を7つの気温の類型それぞれに対して計算した。このrの7つのシリーズを用いると、根釧地方における任意の気温類型に対してロジスチックモデルにより牧草量の経時的変化を予測することができる。ロジスチック式は次の通りである:dx/dt = rx(1-x/K)。ここに、Kは最大可能な牧草量、xは時刻tにおける牧草量である。このような簡単な式による予測は農家や農業団体にとって有効に用いられるであろう。
  • -システムの基本構造と評価-
    南石 晃明
    1991 年 7 巻 2 号 p. 24-36
    発行日: 1991年
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    農水省の通信システムを利用して収集・編集・配信がなされている膨大な日別青果物市況情報の蓄積・検索・加工を可能にするため、データベース化に必要な基本技術を開発し、これに基づいて1977年1月から1990年12月までの14年間の青果物市況情報のべ980万日分をデータベース化した。本データベースは、この期間を通すと、全国77卸売市場の野菜55品日、果実68品目・品種以上の日別・産地(47都道府県および23の外国)別の市況情報(入荷量、価格)を含んでいる。基本技術は、①素データを対象ホスト機種のコードに変換するコード変換技術、②大規模なデータを効率的に蓄積するデータ圧縮技術、③大規模なデータにできるだけ効率的にアクセスできるファイル管理技術、④素データに含まれない情報を付加するデータ加工技術、⑤パソコンと対象ホスト機とのネットワー夕化技術、⑥検索・転送データのパソコンでの利用技術からなっている。これらの技術によって、5.4GBの素データを570MBに圧縮し(10.7%)、通常のワークステーション上に効率的にデータベースを構築し、パソコンから利用することが可能となった。また、本データベースの性能を、①検索時間、②ネットワーク化の方式、③機能、④移植性の面から評価し、研究支援システムとして有効であることを明らかにした。
  • -売立仕切情報と市況情報の関連性-
    南石 晃明, 平野 門司
    1991 年 7 巻 2 号 p. 37-47
    発行日: 1991年
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    青果物市況情報と売立仕切情報の関係を富山県呉羽農協梨選果場の1988年から1990年の3ヵ年(8月および9月)の資料を用いて明らかにした。分析の結果、数量においては売立仕切情報と青果物市況情報は、分析した6市場のうち4市場でほぼ完全に一致した。一方、価格においては、両者がほぼ完全に一致するのは2市場であった。つまり、価格においては市場・年・月などで両者の間には多様な関係が見られた。具体的にはそれらは、①売立仕切情報と青果物市況情報がほぼ完全に一致する場合(月によって一致する規格が変化する場合もある)、②売立仕切情報と青果物市況情報がかなり一致する場合、③売立仕切情報と青果物市況情報の間に明確な関係がみられない場合、などである。ただし、数量においても価格においても、売立仕切情報と青果物市況情報の変動パターンは多くの場合同じである。したがって、青果物市況情報の利用にあたっては、市況情報のこうした特徴を十分に理解しておくことが必要である。この点に注意すれば、全国レベルの市場動向や産地出荷動向の把握などに青果物市況情報を有効に利用できる。
  • -瀬戸内海播磨灘における環境管理の実証的研究-
    池田 三郎, 藤原 茂之
    1991 年 7 巻 2 号 p. 48-64
    発行日: 1991年
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    沿岸域は、漁業、海上交通、工業、都市、レクリエーションなど多岐にわたって利用されてきたが、近年のウォターフロントに対する関心の高まりと海洋資源開発における科学技術の進歩は、その利用形態をますます多様化させて、その価値が見直されようとしている。国土が狭小で資源に乏しいわが国にとって、沿岸域は貴重な資源であり、将来にわたって適切な利用が図られなければならない。しかしながら、その沿岸域は、これまでの急激な都市化、工業化により、すでに深刻な沿岸域資源の崩壊と海域の汚染にみまわれている。特に、瀬戸内海、東京湾、伊勢湾等の閉鎖性海域は、背後地に人口、産業の集中が著しいこと、閉鎖性海域のため水交換が悪いことなどの要因も手伝って、水質汚濁のレベルが高く、有機物や栄養塩類の流入、蓄積による富栄養化が進行している。本研究は、瀬戸内海播磨灘沿岸域を事例研究の対象として、沿岸域資源の持続的利用と適切な環境保全を探るための実証モデルを開発することを目的としている。特に、沿岸陸域の土地利用及び産業活動と、沿岸域の空間資源及び生物資源で構成される生態系のメカニズムとの相互作用を解析できるような経済・生態系モデルを考察し、政策立案者に、沿岸域の利用と資源制約の関係、沿岸海域における汚濁物質の蓄積と生物資源のダイナミックな変動などについて、総合的な検討ができるような手段を提供するものである。
feedback
Top