抄録
近年,医療では,外部照射装置として直線加速器が主に使われているが,コバルト装置はガンマ線出力が安定しているため,線量計の校正や基準線量として利用されている.コバルト装置の基本特性を汎用モンテカルロコードMCNPで解析した.エネルギースペクトル,出力係数(OPF)と深部線量百分率(PDD)をモンテカルロ計算し,電離箱線量計との比較を行った.比較の結果は4.8%以内の一致となり,モンテカルロ計算が有用であった.また広島大学原爆放射線医科学研究所ではコバルト照射装置が生物学的試料(細胞や動物)を照射する目的で使われてきた.その際,低線量,低線量率の照射は鉛板で減衰させて行われてきたが,鉛板による散乱線の増加で線質の変化が危惧されてきた.今回,鉛板の厚さが 1~5 cmの範囲で透過したスペクトルのモンテカルロ計算を行った.この結果, 鉛板の厚さによる大きな変化がないことが分かった.モンテカルロ計算は実測が困難な場合や実測の検証に有効であり,治療計画装置のアルゴリズムにも組み込まれてきている.今後,このモンテカルロ計算を使った手法は,他種の治療装置の計算,品質保証(QA),品質管理(QC)に広く利用されることが予想される.