乳房温存療法後の経過観察中に, 乳腺内膿瘍を来した症例の報告は余り見られず, その病態や原因については十分に解明されているとは言えない. 1992年3月から2000年9月までに当院にて乳房温存療法を施行された190例中, 乳腺内膿瘍を来した4例について検討を行った, 年齢は47~57歳 (平均50.6歳). 膿瘍の発生時期は, 放射線治療終了から1~11ヶ月後 (平均4ヶ月) であった. 今回の検討で全例に共通していたのは, 術前のFNAの施行, 術式の内容, TAMの内服, 放射線治療の照射方法・線量, 放射線皮膚炎の程度であった. その他, 全例ではないものの, seromaの頻回の穿刺排液やCAFの併用なども重要と思われた. なお, 膿瘍の細菌検査で陽性であったのは2例で, 他の2例は無菌であった. 今回の検討からは, 特定の原図を同定することは困難で, 多因子が関与しているものと思われた. 原因検索については, 今後の更なる治療中・治療後の注意深い観察が重要と考えられた.