The Journal of JASTRO
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Low-grade gliomaの放射線治療成績
予後因子と有害事象の検討
土田 恵美子酒井 邦夫笹本 龍太松本 康男杉田 公伊藤 猛
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2001 年 13 巻 3 号 p. 163-169

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抄録

【目的】Low-grade gllomaの放射線治療成績を検討し, 非再燃率および生存年に影響を及ぼす因子と有害事象について明らかにする.
【対象と方法】1982年から1997年の間に新潟大学医学部附属病院で放射線治療が施行されたAstrocytoma (WHO分類grade IIに相当) 24例とOligoastrocytoma18例の計42例を対象とした. 年齢は3~75歳 (中央値: 39歳, 15歳以下: 8例) で, 手術施行例は26例, 化学療法併用例は22例であった. 放射線治療は多くの癌例においてMRIのT2強調画像で高信号またはCTで低吸収域を呈する部位に2cm程度のsafety marginを設定した照射野が用いられ, 1回2Gyで総線量44~66Gy (中央値: 50Gy) の照射が施行された, 観察期間の中央値は74.5ヶ月 (4~193ヶ月) で, 非再燃率と生存率はKaplan-Meier法により計算した. 非再燃率, 生存率に関与する因子の検討には, 年齢, 性, KPS, 屋瘍の局在, 病理組織, 最大腫瘍径, 石灰化, 造影剤による増強効果, 腫瘍切除量, 治療総線量, safety margin, 照射休止期間, 化学療法の有無をとりあげ, 各因子について症例を2群に分け, 2群間の有意差をlogrank testにより検定した.
【結果】42例中10例 (全て成人例) に腫瘍の再発が認められ, 5年および10年非再燃年は各々73%, 67%であった. 内訳は照射野内再発が7例, 辺縁再発が2例, 初回病変と連続しない対側大脳半球への再発が1例であった. 最終追跡時の死亡例は19例 (原病死: 7例) であり, 5年および10年累積生存率は各々80%, 48%, 5年および10年原病生存率は各々92%, 73%であった. 非再燃率については年齢, 腫瘍切除量, safetymargin, 最大腫瘍径が, 累積生存率については年齢, 最大腫瘍径, KPSが, 原病生存率については年齢と腫瘍切除量が有意因子であった. 成人例の9例に痴呆を主体とするQOLの低下が認められ, 前頭葉の病変で腫瘍径が大きい症例, 化学療法供用例に多かった.
【結論】治療成績は良好であったが, 成人では痴呆発生例が多く, 有害事象発生の低減に努める必要がある, Low-grade gliomaに対する治療の時期や方法については議論が多く, 年齢や腫瘍切除量などの予後因子を考慮した最適な治療方針を確立することが今後の課題である.

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© 1994 The Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
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