The Journal of JASTRO
Online ISSN : 1881-9885
Print ISSN : 1040-9564
ISSN-L : 1881-9885
高線量率血管内照射による傷害家兎血管の狭窄抑制に関する実験的研究
小林 雅夫関根 広鈴木 昭彦大山 典明幡場 良明
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 14 巻 4 号 p. 221-228

詳細
抄録

【目的】血管形成衛後にみられる内膜肥厚に対するIridium-192高線量率血管内照射での抑制効果について, 走査電子顕微鏡での検討を行う. 障害部位周囲での変化を観察し, 内膜増殖抑制の機序の一端を研究することを目的とする.
【対象と方法】日本白色種家兎 (雄, 3.0~3.5kg) を用いる.(1) ネンブタール麻酔下で左総頸動脈よりballoon catheter (3.0×20mm) を両側総腸骨動脈に挿入し, X線透視下で6気圧1分間の拡張を3回, 1分間ずつの休止をはさみ繰り返し, 内膜損傷モデルを作製した.(2) 片側の拡張部位に一致させIr-192高線量率照射装置を用い, 線源中心より2mmを基準点に12Gyの血管内照射 (治療長3cm, 線量率18~48Gy/min) を施行した.(3) 照射後夏~12週間飼育後, 静脈麻酔下に開腹して0.1M燐酸緩衝液により灌流洗浄を行い, その後2%パラホルムアルデヒドにより45分間灌流固定した. 灌流後腹大動脈分岐部を含め, 両総腸骨動脈を嫡出した.(4) 浸潰固定後, パラフィン包埋, 薄切を施行. HE染色, Elastica-van-Gieson染色を行い, 光学顯微鏡下で観察した. その後, 画像解析装置で増殖内膜の評価をした.(5) 照射後2~7目飼育後, 静脈麻酔下に開腹して0.1M燐酸緩衝液により灌流洗浄を5分間行い, その後1.2%グルタールアルデヒドにより40分間灌流固定した. 灌流後腹大動脈分岐部を含め, 両総腸骨動脈を摘出した.(6) アルコール脱水後, 臨界点乾燥をし更にAu-Pdイオンスパッターローティングを行い, 走査電子顕微鏡で観察した.
【結果・結論】家兎総腸骨動脈を用いた血管損傷モデルによる血管形成術後の再狭窄予防のための高線量率血管内照射の有用性を検討した. その結果, 内膜増殖抑制効果は12週まで持続した. 照射側では血管径短縮化を認めず, ネガティブリモデリング抑制の可能性が示唆された. 1~2週後では非照射側に軽度の内膜増殖を認めたが, 照射側では認めなかった. 内皮細胞を主体とした変化が主体であり, 走査電子顕微鏡での検討では, 修復は2日目には始まっている可能性があり, 血球系細胞, 血小板, 内皮細胞の集簇がみられる. 照射血管での内皮細胞の核肥大や, 走向異常, 重層化の所見は, 光顕上では内腔を正常に覆う内皮細胞の機能が放射線により影響をうけていると考えられた.

著者関連情報
© 1994 The Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
前の記事 次の記事
feedback
Top