抄録
日本の産業活性化を考えるに当たり、大企業やベンチャー・中小企業に加え、第三の企業群である中堅企業が果す役割にも注目することが必要と考える。本論では、医薬・製薬産業における革新的中堅企業3社を対象に、持続的成長とその原動力としてのイノベーションの特徴並びに役割について調査・実証分析を行い、中堅企業においても漸進的(改良型)イノベーションだけでなく画期的(革新的)イノベーションが起こり、これにより大企業にも太刀打ちできる経営基盤が整ったこと。そして技術的なイノベーションの源となる研究開発において大学や研究者等との交流が重要であったことが判った。今日的な表現で産学交流がイノベーションの進展に役割を発揮していた。調査分析結果として、3社における中堅企業の特徴として次の5点が明らかとなった。1)創業理念が明確であり社内に浸透している。2)企業成長に必要なイノベーティブな画期的商品が明確である。3)事業ドメインが明確であり、本業以外の活動は少ない。4)経営組織が確立され、経営と所有の分離が一応なされているが経営と所有の関係が近い関係にあり、創業者一族の影響が残っている。5)イノベーションが起きる源としての研究開発において、シーズ及びニーズの発掘や活用の過程で人脈の果した役割が強い。また、これに重点を置いた継続的な事業展開を行っている。これら中堅企業の持続的成長を支えたイノベーションの特徴や起きるタイミングとして次の5点が見出された。1)イノベーションは10年ないし15年毎に起きる画期的(革新的)イノベーションと順次起こる漸進的(改良型)イノベーションの組合せであった。2)生産技術(工程改良)的イノベーションよりも、製品開発や製品改良によるイノベーションが多い。3)イノベーションのうち各社2ないし3件は企業収益の増大をもたらし、企業成長、基盤充実の引き金となった。(3社で22件中10件)4)自社技術による技術的イノベーションが主であるが、経営・営業的イノベーション(販売提携等)も行われている。5)自社独自商品重視の開発を行うが、産学協同を含む共同開発、技術導入等による経営資源(開発)の補完を行っていた。