支援工学理学療法学会誌
Online ISSN : 2436-6951
症例報告
皮質脊髄路および皮質網様体路の損傷を認めた重度片麻痺例に対する長下肢装具を用いた前型歩行練習による理学療法経験
関 崇志阿部 浩明
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2024 年 3 巻 2 号 p. 98-110

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抄録

背景および目的】拡散テンソル画像を用いた評価にて皮質脊髄路および皮質網様体路の顕著な損傷を認めた重度片麻痺例に対し、長下肢装具(以下、KAFO)を使用した前型歩行練習を実施し、麻痺は残存したものの屋内外ともに歩行自立に至った症例の経過を報告する。

症例紹介】脳梗塞を発症した60歳代の男性である。重度の右の下肢運動麻痺を呈して随意運動は困難であった。歩行時には麻痺側立脚期での下肢支持性が乏しくKAFOの装着を必要とした。

介入】下肢筋活動の誘発を目的に、足部可動性を有するKAFO装着下で前型歩行練習を行い、歩行能力の改善に伴い、段階的に短下肢装具(以下、AFO)へと移行した。

結果】皮質脊髄路の画像所見が示す通り、発症後4カ月経過しても重度の運動麻痺は残存したものの、歩行はAFOとT字杖を使用し、屋内外ともに自立に至り、歩行速度は64.2 m/minに到達し、復職を果たした。

結論】KAFOを用いた前型歩行練習を実践し、継続したことが歩行能力の向上に寄与した可能性があると思われた。

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