支援工学理学療法学会誌
Online ISSN : 2436-6951
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原著
  • 小野塚 雄一, 井上 和久
    原稿種別: 原著
    2024 年 3 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    目的】本研究は、長下肢装具におけるカットダウンの可否に与える因子が何かを明らかにすることである。

    方法】対象は2015年4月から2021年4月の期間に回復期リハビリテーション病棟へ入院された初発脳卒中片麻痺者で、長下肢装具が処方された44名をカットダウンの可否によって2群に分けて比較した。また、有意な差を認めた項目を独立変数とし、カットダウンの可否を従属変数とするロジスティック回帰分析を行った。

    結果】カットダウンの可否に対するロジスティック回帰分析の結果、膝継手の種類と入院時認知FIMが独立した規定因子として抽出された。

    結語】初発脳卒中片麻痺者におけるカットダウンの可否には、膝継手の種類の違いと入院時認知FIMが影響を与える可能性があることが示唆された。

  • 宮永 陽亮, 平川 裕紀, 倉爪 康裕, 東 洋介, 河野 寛一, 森下 元賀
    原稿種別: 原著
    2024 年 3 巻 2 号 p. 79-88
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    目的】脳卒中片麻痺を呈してウェルウォークWW-1000(以下WW)を使用した患者の、回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ)入棟時の認知・注意機能面を含めた各評価から、退院時の歩行自立因子とそのカットオフ値を検討した。

    方法】対象は脳卒中片麻痺患者113名で、回リハ入棟時のFunctional Independence Measure(以下FIM)歩行4点以下、麻痺側立脚中期の膝折れが著明なため歩行練習において長下肢装具が必要で、WWを10回以上使用した方とした。加えて何らかの方法で自分の意志を伝えられる方は包含とした。調査項目は、年齢、脳卒中機能障害評価法、FIM運動項目、FIM認知項目、Mini-Mental State Examination、Catherine Bergego Scale、Trail Making Test(以下TMT)、WWで算出される各パラメータとした。退院時の歩行レベルを自立群と非自立群に分類し、二項ロジスティック回帰分析を実施した。

    結果】予測因子は年齢(オッズ比0.88)、TMT-A(オッズ比0.96)であり、カットオフ値は年齢68歳、TMT-A 148秒であった。

    結論】WW使用者の歩行自立因子は年齢と注意機能であり、臨床現場での歩行予後予測の一助になると考える。

  • 大鹿 糠徹, 阿部 浩明, 辻本 直秀, 関 崇志
    原稿種別: 原著
    2024 年 3 巻 2 号 p. 111-121
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    目的】本人用の長下肢装具(Knee-Ankle-Foot Orthosis;以下、KAFO)作製の是非を判断する明確な基準は不明である。本研究の目的は、急性期脳卒中者に対するKAFO作製の是非の判断に関連する因子を調査し、臨床家が総合的に判断した結果を予測することが可能な客観的因子を明らかにすることである。

    方法】対象は歩行に際しKAFOが必要であった急性期の脳卒中患者249名である。KAFO作製が必要と判断された群と不要と判断された2群間における調査項目を単変量解析にて比較し、その上で、KAFO作製の是非の判断を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。

    結果】下肢Brunnstrom Recovery Stage、麻痺側下肢支持性、下肢触覚、Scale for Contraversive Pushingが関連因子として抽出された。

    結論】臨床家はKAFOの作製の是非を判断する際に下肢運動機能、麻痺側下肢支持性、下肢感覚障害、pusher現象の重症度を重要視して総合的に判断しているものと思われた。

  • 髙橋 智佳, 阿部 浩明, 佐藤 亘, 梅木 淳
    原稿種別: 原著
    2024 年 3 巻 2 号 p. 128-137
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    目的】本研究の目的は足部可動性を有する長下肢装具(以下、GS-KAFO)を用いた前型歩行練習を提供することによって、現存する予後予測指標によって判定される歩行自立の可否の予測結果を上回る治療効果が得られていたかを明らかにすることである。

    方法】対象は回復期リハビリテーション病棟にてGS-KAFOを作製し、前型歩行練習を提供した脳卒中片麻痺患者43名である。予後予測指標である「二木の早期自立度予測」における歩行自立の可否の予測結果と、実際の退院時における歩行自立の可否を後方視的に調査し、両者を比較した。

    結果】二木の予測結果は、歩行自立3名、非自立28名、予測不能12名であった。一方、実際の退院時の歩行自立度は、歩行自立27名、非自立16名であった。

    結語】脳卒中片麻痺患者におけるGS-KAFOを用いた前型歩行練習の提供は、退院時の歩行自立度の改善に貢献する可能性が考えられた。

短報
  • 松田 雅弘, 掛川 圭, 藤野 雄次, 高橋 容子, 北原 エリ子, 楠本 泰士
    原稿種別: 短報
    2024 年 3 巻 2 号 p. 89-97
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    家事や移動中に従来の抱っこ紐を装着することは、育児の精神的ストレスに加え、肩こりや腰痛を引き起こすなど、母親にとって肉体的負担が大きい可能性がある。そこで、母親が長時間赤ちゃんを抱っこできる負担の少ない抱っこ紐が必要だと考え、その抱っこ紐を開発した。本研究では、左右の腰椎に装着するサポートストラップ、腰椎ベルト、肩ストラップを工夫して、新しく作製した抱っこ紐を装着し、30分間の運動前後の身体的歩行と主観的疲労を調査した。その結果、主観的疲労の低下、歩行時の頭部と体幹の上下動の減少、骨盤傾斜の改善が認められた。このことは新しい抱っこ紐で工夫した点が、抱っこ紐を装着して安定した姿勢で動作が可能となり、疲労度が軽減したことが考えられる。

症例報告
  • 関 崇志, 阿部 浩明
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 3 巻 2 号 p. 98-110
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    背景および目的】拡散テンソル画像を用いた評価にて皮質脊髄路および皮質網様体路の顕著な損傷を認めた重度片麻痺例に対し、長下肢装具(以下、KAFO)を使用した前型歩行練習を実施し、麻痺は残存したものの屋内外ともに歩行自立に至った症例の経過を報告する。

    症例紹介】脳梗塞を発症した60歳代の男性である。重度の右の下肢運動麻痺を呈して随意運動は困難であった。歩行時には麻痺側立脚期での下肢支持性が乏しくKAFOの装着を必要とした。

    介入】下肢筋活動の誘発を目的に、足部可動性を有するKAFO装着下で前型歩行練習を行い、歩行能力の改善に伴い、段階的に短下肢装具(以下、AFO)へと移行した。

    結果】皮質脊髄路の画像所見が示す通り、発症後4カ月経過しても重度の運動麻痺は残存したものの、歩行はAFOとT字杖を使用し、屋内外ともに自立に至り、歩行速度は64.2 m/minに到達し、復職を果たした。

    結論】KAFOを用いた前型歩行練習を実践し、継続したことが歩行能力の向上に寄与した可能性があると思われた。

  • 森 嘉裕, 昆 恵介, 春名 弘一, 加藤 雄大, 安彦 かがり
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 3 巻 2 号 p. 122-127
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    今回、脊髄梗塞により対麻痺を呈し、短下肢装具による装具療法を実施した症例を経験した。本症例は、右側下腿三頭筋の筋力低下による立脚中期の過度な背屈に伴う膝折れを認め、膝折れによる転倒恐怖感を訴えられていた。そこで、右側に背屈制動機能を有するWalk on Trimableを処方し、背屈制動機能の効果を検証した。方法は、三次元動作解析装置を使用し、裸足、Gait Solution Design、Walk on Trimableで至適および最大努力速度での歩行を計測した。評価パラメータは、右立脚期の床反力作用点前方移動量、右足関節底屈モーメントの最大値などを用いた。結果として、Walk on Trimable条件で床反力作用点前方移動量、右足関節底屈モーメント最大値において有意な増加を認めた。背屈制動機能が右立脚期以降で下腿の前傾の制御と床反力作用点前方移動量増大に寄与したと考えられた。

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