2011 年 2011 巻 21 号 p. 122-129
英国のチャリティには監査・検査の2つの外部検査形態が用意されている。監査の目的は財務諸表が「真実かつ公正な概観」を備えていることを保証することであり,簡便法である検査では消極的保証を付すことが求められる。この2つの形態の適用要件は,主としてチャリティの規模によって設定され,要件自体も適切な財務諸表に対する評価が行われるよう,環境の変化等に応じて随時見直されている。
監査は監査実務審議会が発信する国際監査基準(英国及びアイルランド),実務注釈11改訂版(Practice Note 11 Revised)等に従って実施される。Practice Note 11 Revisedは監査実務の中心的存在となるものであるが,その作成にはチャリティ委員会が助言及び支援をするという形式で関与している。
わが国の民間非営利法人は,設立根拠法令が異なる数多くの法人形態が存在し,情報開示や外部監査のあり方もそれぞれである。多様な形態がありながら統一的な監査指針を使用し,規模に応じた外部検査形態が適用されるチャリティの監査制度のあり方は,わが国の民間非営利法人の今後の監査制度のあり方を模索する上で,参考となる点が多いと考える。