現代監査
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報告利益の属性変化が監査業務に及ぼす影響
鈴木 一水
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2011 年 2011 巻 21 号 p. 27-35

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抄録

2000年前後から国際的共通化に配慮して設定されてきた会計基準には,利益計算の面で市場指向と将来指向という特徴が,また設定アプローチの面で原則主義という特徴がみられる。市場・将来指向的会計基準の下で,業績の良い企業の報告利益の持続性と予測可能性は,業績の悪い企業よりも高い。また,業績の良い企業の報告利益の変動性は低下して利益平準化がみられるのに対して,業績の悪い企業の変動性は反対に拡大している。このような業績の良い企業と悪い企業との間の報告利益の質の相違は,企業価値評価における格差拡大を助長している。こうした財務報告環境の変化が,監査の重要性を増大させる一方で,原則主義に基づく会計基準は,監査人の監査判断の負荷と責任を加重にする。監査人の負担を軽減するためには,監査判断の指針を設定するしかないが,様々な問題がある。会計基準の国際的共通化は,監査業務に対してきわめて厳しい難題を突きつけている。

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© 2011 日本監査研究学会
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