現行の監査制度は,明治23年商法による監査役監査,昭和26年から開始された公認会計士監査,その当初のいわゆる会計制度監査において公認会計士監査の受入態勢の整備の一環として充実が図られた内部監査,昭和49年の商法特例法による会計監査人監査,平成18年に成立した金融商品取引法によりスタートした公認会計士または監査法人による内部統制監査から形成されている。監査制度全体における不正への対応の現状を整理してみると,会社法監査と金商法監査において,不正を発見した場合の対応が相互に入り組んでいるため,不正への対応の点で両者の違いを明確に区別することは難しいが,いずれの法律においても不正行為への対処については,最終的には監査役に委ねている。監査役監査における不正への対応をより実効あるものとするため,今後は,一定の規模以上の会社に対して,内部監査部門の設置を義務化する方向の検討が必要ではないかと思われる。