現代監査
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統合報告における信頼性保証のあり方
池田 公司
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2013 年 2013 巻 23 号 p. 50-57

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抄録

1990年代以降,欧米の研究者や監査法人は,伝統的な財務報告の投資意思決定に対する有用性に疑問を投げかける主張を行うようになっている。1994年に公表されたJenkins委員会報告書

(AICPA[1994])で提唱されたビジネス・レポーティングという概念がこうした一連の議論に先鞭を付けたといえるであろう。AICPAは,その後ビジネス・レポーティングのための言語としてXBRL(eXtensible Business Reporting Language)を開発するとともに,ビジネス・レポーティングを一層強化したEBR(Enhanced Business Reporting)への取り組みを始めた。ニューヨーク大学のBaruch Lev教授もLev[2001]において無形資産会計の必要性を強調するとともに,2002年の議会証言(Lev[2002])で無形資産会計における会計基準と監査基準の「表裏一体性」を強調した。

こうした現状の中で,監査の研究や実践を,金融商品取引法監査のような制度監査に限定するのではなく,資本市場やステークホルダーからの期待があれば,Lev教授が2002年の議会証言で指摘したように,無形資産情報のような非財務情報も監査の対象に含めるべきではないかという主張が現れ始めている。オランダのグローバル企業で米国と日本にも事業を展開しているAEGON社は,3年間の準備期間をかけて2012年に統合報告を公表し,同社の外部監査人であるErnst & Youngによる保証業務を自主的に導入している。このような先端的な事例が現れている以上,監査論の研究も資本市場やステークホルダーの新たなニーズに対処していく必要がある。

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© 2013 日本監査研究学会
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