2015 年 2015 巻 25 号 p. 143-150
IIA(The Institute of Internal Auditors)の「基準」は,総合的意見について定める一方で,監査対象の選定段階と個々の監査業務の計画段階の双方において,リスク・ベースのアプローチを採用することを求めている。この点,上記総合的意見の表明は強制されるものではないが,近年は特に,取締役会が行うERMに対する監視活動の実効性を担保することとの関係で期待される状況にあるとみられる。他方で,財務報告に係る内部統制の監査においては,その有効性についての総合的意見が表明される。このため,内部監査がERMに係る総合的意見の表明を視野に入れようとする場合,その考え方を踏まえることは十分に適切と思われる。こうした認識を基礎に,内部監査が総合的意見を形成する場合のリスク・ベースのあり方についての提言を示すものである。