2019 年 2019 巻 29 号 p. 77-86
内部統制報告制度の運用状況に対する評価として,経営者による全社的な内部統制の評価とそれに対する監査人の検討が形式的なものとなっており,実効性に欠けているとの指摘がある。全社的な内部統制の評価は,経営者による財務報告に係る内部統制の評価において,その成否の鍵を握る重要な位置を占めている。それゆえ,全社的な内部統制の評価に対する監査人の検討は,内部統制監査において重要な位置を占めている。内部統制監査の実効性を確保するためには,全社的な内部統制の評価に対する監査人の検討を実効性あるものとする必要がある。財務諸表監査のリスク評価手続において監査人に理解が求められている内部統制と経営者による評価の対象となる全社的な内部統制は,肝要な部分において重なりあっている。したがって,リスク評価手続の過程で入手した監査証拠を,全社的な内部統制の評価に対する検討において積極的に活用することが望まれる。