日本気管食道科学会会報
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特集2 シンポジウム2:咽喉頭異常感の現況と対策
癌における咽喉頭異常感
倉富 勇一郎竹田 和雄小宮山 荘太郎
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2001 年 52 巻 2 号 p. 106-113

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抄録

中咽頭癌,下咽頭癌,声門上癌275名の患者の症状,病歴を調査し,癌における咽喉頭異常感の特徴と癌の早期発見のための対策について検討した。受診のきっかけとなった症状は,咽頭痛や嚥下痛,食べ物がしみるといった痛みに関する症状が32%と最も多く,次いで頸部腫瘤(20%)であり,咽喉頭の異常感は嗄声とともに16%であった。異常感を主症状として受診した場合,原発巣の進行度は少ない傾向があり,特に下咽頭癌においては約90%がTl,T2であった。癌における異常感にこれといった特徴はないが,痛みについては「骨が刺さったようなチクチクする痛み」に代表される軽度の痛みが癌の特徴の一つであった。また,癌における異常感や痛みを感じる部位は癌の占拠部位にほぼ対応しており,症状を感じる広さは痛みの方がより限局していた。以上から,咽喉頭の異常感や痛みといった自覚的にしか分からない症状で受診した患者の中から癌を見逃さないことが早期発見に重要であり,特に異常感や軽度の痛みが左右いずれかに局在するような,特定の比較的限局した部位に持続的にみられる場合は,癌の存在を強く疑う必要がある。
癌患者の平均病悩期間は2カ月以上であり,約20%の患者は異常感や軽度の痛みを自覚していても受診をためらっていた。加えて,癌患者の約20%は咽喉頭の異常感や痛みにより受診した際,上気道の炎症と診断され投薬を受けていた。咽喉頭の異常感や痛みは上気道炎症状と類似しているが,これらが癌による症状の可能性があることを一般社会に広報し,同様の認識を耳鼻咽喉科医のみならず広く医療関係者に深めることが,癌の早期発見につながるものと思われる。

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