2007 年 58 巻 4 号 p. 392-397
日常診療において,のどの違和感や舌の違和感などを訴え,咽喉頭異常感症や舌痛症の疾患が疑われる患者が最近増加する傾向が認められる。器質的疾患がないにもかかわらず,症状の訴えがあるので(1)身体的要因と(2)心理的要因が合わさって症状が出現するものと考えられている。今回われわれは,日常診療において診断や治療に難渋する器質的疾患のない咽喉頭異常感症18例,舌痛症14例に対し血清鉄,銅,葉酸,亜鉛濃度,さらには口腔内カンジダ症の有無,亜鉛製剤投与による症状改善度を検討した。咽喉頭異常感症18例中12例(67%),舌痛症14例中8例(57%)で血清亜鉛濃度の低下が認められ,亜鉛製剤投与によって半数以上の症例で症状の改善が認められた。咽喉頭異常感症や,舌痛症に対しても血清亜鉛濃度低下の可能性も考慮し外来診察に当たることの必要性が示唆された。