日本気管食道科学会会報
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症例
喉頭部分切除,喉頭全摘術後瘻孔に対するperifascial areolar tissue (PAT) の使用経験
物部 寛子持木 将人滝沢 克己岡田 和也
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2015 年 66 巻 4 号 p. 262-266

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抄録

頭頸部癌術後合併症として咽頭皮膚瘻または喉頭皮膚瘻を生じることがあり,術前放射線照射による創傷治癒能力の低下を配慮して治療にあたるが,時として閉鎖に難渋することがある。今回われわれは,放射線化学療法後再発rT3症例に対する喉頭部分切除後に生じた喉頭皮膚瘻,高齢者での照射後再発rT1症例に対する喉頭全摘後に生じた咽頭皮膚瘻孔に対し,perifascial areolar tissue (PAT) を用いた瘻孔閉鎖を行い良好な経過を得たので報告する。術後咽頭皮膚瘻,または喉頭皮膚瘻に対しては,その瘻孔の大きさにより単純縫縮やhinge flapなどの局所皮弁の工夫,大胸筋皮弁,DP皮弁などの有茎皮弁,または陰圧閉鎖療法や今回のようなPATの使用があげられる。PATは骨・腱露創に対する自己組織による被覆材料として報告され,悪性腫瘍摘出後の死腔充填や髄液漏閉鎖などにも応用される。主に外腹斜筋や大腿筋膜上から採取可能な水平方向の血管網を有する組織であるが,われわれ耳鼻科医には鼓膜形成・鼓室形成術への使用としてなじみが深いものであり,有茎皮弁や遊離皮弁と比較し採取手技が容易で採取部位の犠牲や全身侵襲が少ないなどの利点があり,試してもよい方法と思われる。

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