2020 年 71 巻 3 号 p. 251-257
甲状腺低分化癌の定義は変化してきた。特に本邦では甲状腺癌取扱い規約 (規約) が取り決める定義とWHOの定義の2種類が存在し,この2つはしばしば食い違ってきた。このような状況下のため,本邦では甲状腺低分化癌の症例報告は極めて少ない。本研究では規約の第6版に準拠した,すなわち低分化成分は10%以下でも甲状腺低分化癌と定義した場合の,甲状腺低分化癌20例につき臨床的に検討を加えた。症例は男性5例,女性15例で2例を現行のWHOの定義であるトリノ基準,10例を第7版の基準 (低分化成分は50%以上必要) のみ,8例を第6版の基準のみとグループ分けした。術前血清サイログロブリン値はほとんどの症例で上昇していた。再発例は8例あり,再発時には放射線ヨードは陰性で,サイログロブリンは上昇しない症例が多く,再発のチェックにはPET-CTが有用であった。死亡例は7例で再発症例はほとんど救済できていない状況であった。2年累積再発率は36%,3年全生存率は65%であった。再発/死亡症例と病理学的なグループとは関連がなく,低分化癌に限らず低分化成分を含む分化癌は,それに応じた治療と経過観察の仕方が必要であると結論した。