日本気管食道科学会会報
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喉頭の再生
平野 滋
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キーワード: 喉頭, 声帯, 再生医療
ジャーナル 認証あり

2021 年 72 巻 5 号 p. 262-270

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抄録

喉頭は軟骨,筋肉,声帯粘膜からなる複合組織であり,呼吸,発声,嚥下の3つの機能を有する器官である。これが不可逆的な損傷を受け重大な機能損失をきたすと,組織再生が必要となる。発声のための振動機能を失った声帯粘膜を再生するために,塩基性線維芽細胞増殖因子 (bFGF) と肝細胞増殖因子 (HGF) が優れた再生効果を持つことが確認され,臨床試験あるいは実地臨床応用の段階に至っている。また,ヨーロッパでは間葉系幹細胞を用いた声帯の再生に関する早期臨床試験が行われ有望な結果が報告された。bFGFは神経・筋再生効果もあり,麻痺後の声帯筋の再生効果が確認されている。喉頭半切や全摘後の欠損部の再生には,新たなbio-scaffoldが開発され研究されてきた。脱細胞細胞外マトリックスが喉頭半切後の再生土台として組織親和性に優れ,複合組織の一期的再生効果が動物実験で確認されている。また全喉頭の脱細胞技術が確立され,脱細胞した喉頭を用いた喉頭全摘後の喉頭移植も夢ではなくなってきている。再生医療の進歩は日進月歩であり,今後のさらなる臨床へのトランスレーションが期待される。

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