日本気管食道科学会会報
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症例
複数の動脈破裂から急激な頸部腫脹と気道狭窄をきたし救命しえた神経線維腫症の1症例
堤内 俊喜意元 義政成田 憲彦藤枝 重治
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2022 年 73 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

神経線維腫症1型(neurofibromatosis; NF-1)はまれに動脈狭窄・動脈瘤・動静脈瘻・動静脈奇形などの血管病変を合併すると言われている。血管脆弱性に起因すると思われるこうした血管病変は,発生箇所や条件によっては致命的な合併症を引き起こす。今回,NF-1に合併した胸肩峰動脈および上行咽頭動脈破裂に対して,緊急気管切開・血管内治療で救命しえた症例を経験した。同時に2カ所からの動脈性出血を起こし救命しえた例はまれであり,文献的考察を加えて報告する。症例はNF-1の61歳の女性,軽度の頸部への刺激後より急激な腫脹が出現したため受診した。気道狭窄に対して緊急気管切開を行い,創部からの著しい出血を認めたため出血源検索で施行した造影CTで右頸部に巨大血腫および造影剤の漏出を認めた。動脈破裂による急激な頸部腫脹を疑い,血管造影を施行し出血源に対してtranscatheter arterial embolization(TAE)を行い,止血を得られ救命することができた。NF-1症例で,頸部からの出血をきたした場合には緊急での気道確保が必要となると考えられ,われわれ耳鼻咽喉科・頭頸部外科医もこうした合併症について熟知しておく必要があると考えられる。

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