2022 年 73 巻 1 号 p. 29-35
症例は66歳,男性。2007年にStage IVa胸部中部食道扁平上皮癌に対して化学放射線療法(CDDP+5-FU療法+60 Gy)を施行し完全奏効となったが,2016年に食道胃接合部腺癌と診断された。切除範囲に照射部位が含まれていたが,左開胸開腹下部食道噴門切除,食道空腸,空腸胃管吻合(空腸間置)術を施行した。食道空腸吻合部の縫合不全を認めたが,縫合不全部を介した間欠的な膿瘍ドレナージおよびに縫合不全部の減圧,経腸栄養の併用により,膿瘍腔は徐々に縮小し縫合不全は治癒した。今回われわれは,根治照射部位における縫合不全に対して,縫合不全部を介した膿瘍ドレナージにより保存的に改善した症例を経験した。本症例に対して,文献的な考察を加え報告する。