下咽頭梨状陥凹癌に対し喉頭摘出を施行する際の気管傍リンパ節郭清について,患側の気管傍郭清については必須とされているが健側郭清の必要性については一定のコンセンサスは得られていない。今回,2005年1月から2015年12月に当科で喉頭摘出を伴う原発巣切除術を施行した下咽頭梨状陥凹癌117例を対象に,気管傍郭清の施行状況,気管傍リンパ節転移率,術後甲状腺ホルモン内服率,術後ビタミンD3製剤内服率,予後について後方視的に検討した。患側の気管傍リンパ節転移率は11.1%(117例中13例),健側の転移率は4.5%(22例中1例)であった。気管孔周囲再発を1例に認めたが化学放射線療法で制御されていた。気管傍郭清を両側施行した症例では患側のみ郭清した症例に比し,治療後の甲状腺ホルモン,ビタミンD3製剤の内服率が有意に高かった。臨床的に気管傍リンパ節転移が明らかでない下咽頭梨状陥凹癌に対し喉頭摘出を伴う原発巣切除術を施行する際,健側の気管傍リンパ節転移は稀であるため,患側甲状腺片葉切除+患側気管傍郭清(健側温存)は許容できる術式と考えられる。