抄録
本研究の目的は,看護師の心身の疲労とその先に生じる医療安全の低下を防止する
ために,勤務帯別の作業負荷を実態調査し,疲労との関係について検討することである.調
査対象は,A 民間総合病院(2004 年DPC 参加)の消化器内科病棟(80 床)に在籍するスタッフ
看護師29 名全員とした.対象者の平均年齢は28 歳,平均経験年数は6 年であった.各看護師に
日勤帯1 回,準夜勤帯1 回,深夜勤帯1 回の調査協力を求め,勤務帯ごとの作業負荷(身体的負
荷として1 分毎の歩数,精神的負荷として業務の中断・衝突の発生回数および忙しさ感),疲労
の自覚症状を調査し,これら要因の関係性について検討した.その結果,日勤帯では主に身体的
作業負荷の多さが疲労に影響を与えていると推測された.また,準夜勤帯では身体的作業負荷と,
変則的に多発する業務が疲労に影響していると考えられた.深夜勤帯での疲労は精神的作業負荷
と,概日リズムの乱れが影響していると考えられた.以上のように,勤務帯別に作業負荷と疲労
および忙しさ感の関係は異なっているため,勤務帯別の疲労防止策の検討が必要であり,適切な
対策を講じることが医療安全の低下を防止すると考えられた.