医用生体材料への蛋白・カルシウムの沈着は,単なる材料の劣化現象に留まらず,致死的な疾患を起こす原因の一つである.しかし,蛋白・カルシウムの沈着機序には,不明な点が多い.我々は,K-IIIを用いて厚さ50μmの膜状試料を作成し,急性疲労(加速耐久試験装置),慢性的的負荷(クリープ試験,荷重100g,150g,300g),動物実験を行い,その資料を用いて小角散乱実験と散乱データのフラクタル解析を行った.その結果,従来から行われてきた生体材料の加速耐久試験(疲労を実際より短時間で発生させる方法)は,全く動物を用いた生体内部での材料の劣化を再現していないことが明らかになった.さらに,我々は劣化の過程では,スケーリング則が成立することが分かった.