2012 年 107 巻 11 号 p. 830-835
醸造食品の製造には,麹菌Aspergillus oryzaeを中心とした糸状菌が用いられている。糸状菌の仲間には,きのことしてなじみの深い担子菌が自然界に分布していて,春秋の季節には,私たちの食卓に上ることが多い。きのこは糸状菌の仲間であり,麹菌よりも大型で複雑な形態の子実体を形成し,麹菌と同じように分解酵素を生産することが知られている。本解説では,これまで食材として見られていた担子菌・きのこの酵素生産性に着目して,発酵食品の製造への利用への研究が進められていること,著者らが進めているきのこの耐塩性プロテアーゼの検索に関する研究成果ときのこの醸造への利用の展望についてわかりやすく解説していただいた。