2021 年 116 巻 3 号 p. 173-181
①充填後間もない広島県産の1.8L普通酒,9本(茶色瓶)と720ml純米酒,12本(茶色瓶5本,緑瓶7本)を約6ヶ月保存し清酒着色度の変化を調べた。普通酒は全ての製品において着色度の顕著な増加は見られなかったが,純米酒では製品間で着色度の増加程度に差が見られた。
②保存中の着色度の増加分と清酒成分の相関関係を調べた結果,緑色瓶の純米酒では,清酒に含まれる鉄分含量が多いほど清酒着色度の増加分が小さいという傾向があった。
③純米酒に鉄分を添加して保存試験を行った結果,清酒中の鉄分含量が高いほど蛍光灯照射下で保存した清酒着色度の増加分は小さいという傾向が認められた。さらに,鉄分と光増感剤であるリボフラビンを同時に添加して蛍光灯下で保存試験を行った結果,その傾向が確認された。
④市販の遮光袋を使った保存試験の結果,遮光袋の効果には差があること,茶色瓶に比べると着色度を抑える効果は小さいことが分かった。
⑤清酒着色度には影響を及ぼさない程度の低濃度の鉄分が,保存温度10~15℃,緑瓶,蛍光灯照射下という保存条件において,清酒着色度の増加に対して抑制的に作用している可能性が示唆された。