日本釀造協會雜誌
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早湧き及び湧遅れ山廃酒母における細菌と酵母の死滅について
塚原 寅次中村 善吉亀井 宏成魚住 政二
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1957 年 52 巻 8 号 p. 659-655

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抄録

1. 水麹時に多量の酵母を添加して早湧きさせた山廃と, 硝酸加里を汲水石当4.2匁添加して湧遅れさせた山廃の両酒母について細菌と酵母の消長を追求した。
2. 酒母或はもろみを直接2白金耳殺菌麹汁試験管に接種して28℃ で培養し, 48時間後の酸度を細菌酸度と言う用語で現わし, 細菌と酵母の消長を簡単に知る方法を初めて用いた。
3. 両酒母共, 乳酸菌は湧付後酒精が5~6%出た頃死滅した。
4. 酵母の染色率は酒精が10%出る頃迄は10%以下であるが, これ以後に更に品温を高くとると酵母の死滅率は急増する。従つてBe8°以下で品温を30℃ 近くもとり, 無理にBeを切らせることは徒らに酵母を死滅させるのみで寧ろ危険である。
5. いかに早湧き或は湧遅れ山廃酒母でもBe8°, 酒精10%, 最高温度25°附近で分けるのが安全醸造である。
6. 坊主翫が危険であると言うのは酵母が殆んど死滅しているのではないかと考える必要がある。
終りに臨み種々御指導御鞭撻を賜つた山田所長及び湧遅れ山廃酒母の試料の採取, 分析等に御便宜をいただいた鈴木技官及び同研究室の諸兄に厚く感謝致します。

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