日本釀造協會雜誌
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清酒醸造にわける無機塩の影響に関する研究
(第7報) 無機塩添加麹抽出液の着色の成因と色度の変化, 特にOxidase類及びD.O., pHとの関係
伊藤 恭五郎佐々木 宏民千葉 繁
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1959 年 54 巻 11 号 p. 814-811

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抄録

(1) CaCO3, CaSO4, MgSO4添加及び対照の麹を造つてその抽出液の着色の成因とその変化並にPH, D.O., tyrosinase, catalaseとの関係について実験した。
(2) 塩類添加麹の抽出液が着色現象を呈し (特にCaCO3のものが顕著) その色度が経日的に増大するのはpHが高いことにより直接的には自動酸化が行われること, 塩添加によつて製麹され易くより好気的, 酸化的に製麹されるために村上の言われる所謂酸素要求性の大なる類似の麹となり, その抽出液のD.O.が少くなり経目的に酸化生産物が増大すること, 又tyrosinaseの生産が二六となりその活性がpHの高く保持されることによつて持続的に安定となり, その作用が強く促進され吉色生成物melanineの形成が増大すること, peroxidaseの酸化作用とcatalaseの酸化系に対する関与とによる着色の促進及びこれ等の相互の連繋ある綜合作用等によるものと推定した。
(3) 製麹の際CaCO3, CaSO4, MgSO4の如き塩類 (特にCaCO3) 添加することにより村上の指摘する酸素要求性の大なる類似麹を人為的に製造し得る可能性を認めた。
(4) これ等麹抽出液の1ケ月以士に亘る長期貯蔵 (貯蔵温度8~10℃) による色度はCaCO3添加のものは勿論CaSO4, MgSO4のものでも対照と明確に判別出来たが, 麹そのものの外観では色度に殆んど差が認められなかつた。
(5) 塩類添加麹酵素の産生増強と抽出液の色度との関係を実際酒造に近い方法で確認する目的で実験したところ, もろみ濾液製成直後の色度では対照と殆んど差がなかつたが, これを案温に長時問放置又は火入加温等の衝撃を与えることによつて次第に色度が増進することを認めた。

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