日本釀造協會雜誌
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乳酸菌が味噌に及ぼす影響について (2)
清水 行之
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1962 年 57 巻 11 号 p. 1041-1046

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抄録

味噌醸造における乳酸菌について, 分離法並びに分布状態を調べこれが味噌中での棲息状態を追求した結果を要約すると次の通りである。
1) 乳酸菌の分離培養基に検討を加え, 使用したKH2PO4, NaClがpHに影響を及ぼすことを示し, 乳酸菌を短時間に確実に分離する平板重層法並びに酵母を確実に速やかに選択分離し得る平板塗抹培養法の技法について述べた。
2) 味噌中の乳酸菌は種糀に由来することを認めこれが製糀中に増殖して味噌に移行する。この間空気中, 機械器具よりの侵入があるが, 空気中よりは僅少で, 機械器具の肌には無数に存在するが, これは糀の移行工程中に附着繁殖し常に稼働される工場の実態においてはこれ等は附着離脱が繰返されている。
3) 温醸中には, 乳酸菌は不活発乍ら製品に到る迄若干の死減はあっても菌教を保っており, 環境に恵まれれば常に活動する状態におかれている。
4) 味噌の官能的異常なものに乳酸菌と酵母の醸酵過多が起因するのは略々確かである。この共存醸酵では生醗酸効率が高まり生酸量は増大する。
5) 枯草菌, 馬鈴薯落等の腐敗菌は乳酸菌の生酸を緩和し, 乳酸菌は腐敗菌の増殖を抑制するように作用する。終りに臨み御校閲を賜った松本憲次博士に深謝致します。又参考資料となった丸福通信を御送り下さった日本醸造工業K.Kの御好意に厚く御礼申上げます。

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