日本釀造協會雜誌
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酢酸菌とその利用に関する研究 (第12報)
もろみより分離した酢酸菌の性質について
柳田 藤治住江 金之
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1975 年 70 巻 3 号 p. 185-191

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抄録

もろみより分離した酢酸菌についてその形態的および生理的性質を検討した。
1. 形態は単一, 双状または連鎖状の桿菌で大きさは0.6~1.0×1.2~3.0μ の間にあり, 運動性のある菌は16株であった。
2. 麹汁培地に較べ麦芽汁培地では培地を混濁させる菌株が多かった。麹汁寒天培地では流走性が見られるのに反し麦芽汁培地では見られなかった。
3. 麦芽汁寒天培地 (アルコール3%添加) での増殖最適温度は大部分の菌で30~35℃ であった。麹汁培地 (酢酸無添加) での死滅温度は大部分の菌では60℃, 10分であった。
4. 窒素物の資化性は炭素源としてエタノールを用いた場合よりもグルコースを用いた場合の方が良い結果を示した。ペプトンは全菌株により硫酸アンモニウムは約半数の菌株により資化された。
5. 58株中41株の菌が35~40%のグルコース濃度に生育し, また43株がアルコール濃度10~11%に生育し得た。同じ菌株がグルコースおよびアルコールに対し高い抵抗性を示した。
6. 酢酸に対する抵抗性は大きく分けて1。5~2.0%と2.0~2.5%に大別され, 食塩に対する抵抗性は1.0~1.5%であった。しかし6.0~7.0%の高濃度食塩に生育出来る菌株もみられた。
7. 形態的および生理的性質から分離菌をBERGEYの分類法により同定したところ, A.aceti17株, A.rancens 10株, A.pasteurianus 3株, A.kuetzingianus 22株, A.suboxydans 2株とA.oxydans 4株に同定された。
8. インベルターゼを有する菌株は21株で増殖最適温度の低い菌にその性質が見られ, マンニットを酸化して果糖を生ずる菌は25株であった。麹酸を生成する菌株は4株でいずれもA.oxy4ansと同定されたものであった。ヅルシットを酸化してガラクトースを生成する菌株およびグリセリンを酸化してジオキシアセトンを生成する菌株は数株に過ぎなかった。

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