日本釀造協會雜誌
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蒸米の老化現象について (第1報)
蒸米老化の一般特性
三吉 和重小山 和男
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1975 年 70 巻 4 号 p. 277-281

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抄録

1. 蒸米を11℃にて気中放置すると急速に酵素 (α-amylase) による被消化性が低下する。気中放置2時間にて分解速度として20%, 24時間にて約80%も低下する。また気中放置を日数単位で行なうと, 長間時の酵素消化を行っても元に回復しない。
2. 蒸米の液中放置は長時間 (最大15日間) 行なってもその被消化性は殆ど低下せず, 初期分解はむしろ放置する方が速い.
3. 気中, 液中放置蒸米の糊化度の変化は, 酵素法ではあまり無く, glucoamylase法で100%, α-amylase法で90%台に維持される。ヨード電圧滴定法では糊化度の評価が50~60%であり, 放置によりその20%程度が低下する。
4. 糊化度の測定による評価は, 蒸米澱粉の老化の程度を示すものであり, これを「真の老化」とし, それに対し粒状態における酵素 (α-amylase) 被消化性の低下を「みかけの老化」と呼ぶことにする。測定条件 (酒造環境に近い) では真の老化は少なく, みかけの老化は気中放置によって急速に増大する。
5. 気中放置におけるみかけの老化は蒸米含有水分量によって大きく左右され, 25~45%の水分含有時が最も高い。
6. 気中放置蒸米を輪切りにして内部を露出し, 消化させても, みかけ老化の回復は殆ど認められない。
7. みかけの老化を防ぐのは, 蒸米の水分吸収とそれに伴なう十分な膨潤 (組織的破壊, ゆるみ) を起こさせることであろうと考えた。

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