日本釀造協會雜誌
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清酒酵母協会701号のノルバリン, ノルロイシン耐性変異株の分離及びその醸造特性
大内 弘造佐藤 和幸宮島 紀芳荒木 敏明秋山 裕一
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1981 年 76 巻 12 号 p. 843-847

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抄録

iBuOH及びiAmOHの高生産株を得る目的で, 清酒酵母協会701号に紫外線照射を行って突然変異を誘発し, NV及びNL含有培地で集殖することによって, NV, NL耐性株を分離した。
代表的耐性株NLV90-6は親-株と同じ発酵力を持ち, NV, NL各20mM含有培地でも非含有培地における親株の増殖速度と同じ増殖能を示した。
親株のiBuOH及びiAmOH生合成能はNV, NLの添加によって減少したが, 耐性株には減少しないものがあった。ただし, それらもiBuOH, iArnOHの高生産株ではなかった。
清酒もろみの発酵では親株よりiBuOHは幾分多く, またiAmOHは幾分少なく生成し, A/B比には明らかな差が生じた。
製成酒の官能評価では親株と同等であったが, 親株にくらべてアミノ酸度が多いことが特徴であった。
清酒もろみ, 麦芽汁及びブドウ果汁の発酵中のアミノ酸消長からみて, アルギニン等の例外を除きアミノ酸の取り込みが親株よりも遅いことが推察された。
NV及びNLの消費量を調べた結果, 親株の半分以下であった。また, 14C-ラベルを使用し, バリン, ロイシン及びリジンの取り込み速度を調べた結果, 親株の1/2以下であった。
以上の結果, 得られた耐性株は窒素源の膜透過性異常変異株と結論された。
最後に麦芽の提供と麦芽汁の調製に御協力いただいたニッカウヰスキー株式会社辻謙二氏に感謝する。

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