日本釀造協會雜誌
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酒造用原料米の品種及び産地の米質・酒質への影響
高橋 康次郎北本 勝ひこ戸塚 昭吉沢 淑中村 欽一大橋 勝庭山 孝
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1984 年 79 巻 8 号 p. 586-591

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抄録

埼玉県の4産地で55年及び57年に収穫された3品種 (ニホンマサリ, 日本晴及びむさしこがね) の原料米について, 気象データ, 原料米分析値及が小仕込試験による製成酒成分について分散分析及び単相関分析を行ったところ, 次の結果が得られた。
(1) 2年間を通して産地間で有意差のみられた項目は, 出穂後1ヶ月平均気温同較差平均, 同全日照時間, 成熟前1ヶ月平均気温, 同較差平均, 出穂から成熟迄の日数8月1日から出穂迄の日数, 玄米千粒重, 胚芽残存率白米粗タンパク, 吸水率 (120分), 製成酒のアミノ酸度の12項目であった。
又, 品種問で有意差のみられた項目は, 8月1日から出穂迄の日数, 玄米千粒重, 製成酒の酸度の3項目であった。
(2) 平均気温が高く, 全日照時間の長い気象条件の産地 (平野部) で収穫された原料米は, 反対の産地 (丘陵部) の原料米に比較し, 玄米千粒重が小さく, 胚芽残存率が低く, 粗タンパクが多く, 吸水率が低い傾向にあり, それらの原料米で醸造した清酒ではアミノ酸度が高くなった。又, これらの特徴は, 埼玉県内の13産地 (57年は11産地) の原料米にも適用された。
(3) 原料米の酒造適性を早期に判断するには, 気象データの中で成熟前1ヶ月平均気温又は8月1日から出穂迄の目数等が参考になることがわかった。
(4) 単相関分析の結果, 胚芽残存率と製成酒のアミノ酸度との間に高い負の相関関係 (55年γ=-0.910**, 57年γ=-0.585*, n=12) が得られた。

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