日本醸造協会誌
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発酵酒に適するカンショの選抜と発酵酒の評価
大庭 理一郎三枝 敬明堀井 恒
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2000 年 95 巻 3 号 p. 207-213

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抄録

カンショを用いた発酵酒の開発を目的に本報では14種類の高色素および低色素カンショの中から発酵酒に最も適したカンショの選抜を行なった。
その結果, 以下のことが判明した。
(1) 高色素カンショの中ではアヤムラサキを発酵原料とすることにより, イソアミルアルコールおよびイソブチルアルコール濃度が高く, エステル臭の強い発酵酒を得ることができた。またその香りは, ぶどうを原料とするワインに類似していた。更には, 酸度が比較的低く, 飲みやすいことよりアヤムラサキが発酵酒の原料として最も適していると思われた.
(2) 低色素カンショの中では九州118号あるいは九州125号を発酵原料とすることにより, 発酵酒の香気成分濃度が供に多く検出され, フルーティーな香りが強いことより, これら2種を酒適カンショとして選抜した。
(3) アヤムラサキ単独での発酵酒はアントシアニン含量がかなり多く, 発酵酒の赤色が非常に濃すぎるため, 透明感のある赤い色彩の発酵酒を目的に, 低色素カンショの九州118号あるいは九州125号との混合発酵を試みた。その結果, 水40認に対してアヤムラサキ20gと九州118号60gの混合発酵酒のイソアミルアルコール, イソブチルアルコールおよび酢酸イソアミル濃度が最も高く, ワイン様のフルーティーな香りが強く, 目的とする赤い色調を呈すると供に, カンシ灘単独発酵で感じられたイモ臭さを感じさせない発酵酒を作ることができた。

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