日本醸造協会誌
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麹菌を用いたγ-アミノ酪酸 (GABA) の生産と通電透析によるGABAの分離
土谷 紀美西村 賢了岩原 正宜
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2002 年 97 巻 12 号 p. 878-882

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抄録

本報告では, 液体培養で得られる麹菌体を利用したリアクターにより, 菌体結合型グルタミン酸脱炭酸酵素 (GAD) の作用でGABAを生産させることを試みた。さらに, 通電透析により基質であるグルタミン酸との分離も試みた。また, 生産効率を高めるため, 高いGAD活性を有する菌体を得る条件を検討した。その結果, 液体培地のpHが5.0であること, 培地中への50μMのPLPの添加が効果的であることが明らかとなった。
液体培養によって得られたペレット状の麹菌体 (乾燥重量6g) のGAD活性を低温処理によって高め, 反応液pHを5.3-5.5にコント'ロールした撹拝槽型リアクターに麹菌体を担体として用い, 菌体上のGADに500mMグルタミン酸と0.5mMピリドキサール5-リン酸を反応させた。今回, 菌体の破砕処理や固定化は行わず, ペレット状の菌体をそのまま用いた。その結果, 100分反応後のGABA濃度は340mM, 200分後には400mMに達し, 基質からの変換率は約80%と高かった。生産効率は8.5mmol-GABA/g麹菌体/hr (0.9g/g/hr) と, 極めて高く, 短時間で高濃度のGABA溶液を得ることができた。その際, リアクターの反応温度は, GADの熱安定性から37℃ が望ましかった。また, グルタミン酸とGABAの分離には, イオン交換膜を利用した通電透析が効率的であることがわかった。

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