日本醸造協会誌
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遺伝子組換え低グルテリン米利用による酒質向上の可能性
丸田 嘉幸井上 剛新田 直人
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2003 年 98 巻 7 号 p. 509-517

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抄録

遺伝子組換えの手法により作出した低グルテリン米 (組換え体H 75) を用いた酒造りを検討した結果, 以下のような知見を得た。
(1) 組換え体H 75の米貯蔵タンパク質のうち, グルテリン量が原品種月の光の60%程度に低減していたが, 全タンパク質量では差は認められなかった。
(2) 組換え体H 75原料米は培養変異によるとみられる大粒・心白が観察され, 蒸米消化性が向上していた。
(3) 小仕込試験により得られた日本酒は, 組換え体H 75酒中のアミノ酸度が原品種月の光酒中の60%程度に低減していた。
(4) 小仕込酒の貯蔵試験を行った結果, 組換え体H 75酒中では後代非組換え体および五百万石で造った酒と比べて, 着色度, 3-デオキシグルコソンおよび紫外部吸収が低く推移することが確認された。
(5) 以上の結果から, 本低グルテリン米は精米特性や醪での溶解性にやや問題があるが, アミノ酸度の低い日本酒を造るためには有用な原料米と推察された。

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