2023 年 49 巻 1 号 p. 32-41
本研究の目的は, 看護基礎教育課程における熱傷および外傷に関する教育内容の実態を明らかにすることである.
2021年9月~11月, 日本看護系大学協議会2020年会員校265校を対象に看護基礎教育課程での熱傷および外傷教育の内容について個人属性, 授業内容, 教育するうえでの困難等で構成したWeb調査を実施した. 分析は, 量的項目は記述統計, 自由記述は質的記述的分析を行った.
調査の結果49名の回答 (回収率18.5%) があり, 対象者の属性は, 看護学教員経験年数は15.7±8.7年, 臨床での看護師経験年数は11.3±7.5年, 臨床で熱傷・外傷看護の有経験者が31名 (63.3%) であった. 熱傷および外傷教育について, 授業が開講されていたのは60.0%程度だが単回の授業であることがうかがわれ, 実習対象者としていた学校は30.0%以下であった. 授業内容は「病態生理」「疫学」「気道・呼吸・循環・意識・体温管理」が多く取り上げられており, 医学的知識と生理学的評価や対応に関する内容を重要視していることが明らかとなった.
教授するうえでの困難は熱傷および外傷で共通しており, 【病態そのものの複雑さ】【病態が複雑で多種多様な内容を教授することのむずかしさ】【学生が理解するための難易度の高さ】【臨床に則した授業展開のむずかしさ】【学習のためのリソース不足】【講義に対する学生のニーズが不明瞭】のカテゴリーが生成され, 専門性の高いケアが必要とされる背景から半数以上が困難を感じて授業を行っていることが明らかとなった.
以上から, 熱傷および外傷に関して看護基礎教育課程で学ぶ機会は決して十分とはいえず, 実際の患者の回復過程に必要なケアについて十分に取り上げられていない可能性がうかがわれた. 今後の示唆として, この現状を前提とした卒後教育の検討が必要であり, 熱傷および外傷教育の充実化を図るべく, 診療ガイドライン等をふまえた教育の水準と内容の検討が望まれる.