熱傷
Online ISSN : 2435-1571
Print ISSN : 0285-113X
49 巻, 1 号
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総説
  • Amber Young, Anna Davies, Carmen Tsang, Jamie Kirkham, Tom Potokar, Ni ...
    2023 年 49 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

     【目的】国際的に使用可能な熱傷治療研究のためのコア・アウトカム・セット (Core Outcome Set: COS) の選定.
     【デザイン】国際的コンセンサスの合意 (作成期間: 2017年4月~2019年11月).
     【方法】システマティック・レビューおよび関連文献から, 検討候補となるアウトカム (臨床評価項目) を抽出した. デルファイ調査方法による共同意思決定作業を通じて, 各国の臨床家と研究者およびイギリス圏の患者と介護者が, アウトカムの優先順位決定作業に参加した. 匿名化されたフィードバック作業を通じて, コンセンサスの達成が目指された. まずアウトカム選定のための定義基準が事前に合意され, それに基づいた投票を行うためのコンセンサス会議が開催され, 最終的にCOSが決定された.
     【結果】データソースの調査から1,021のアウトカムが抽出され, ついでその中から88のアウトカム候補が特定された. 1回目のデルファイ調査には, 77ヵ国の医療従事者668名 (18%が低・中低所得国) とイギリス圏の患者または介護者126名が参加した. 1回目終了後, 1つのアウトカムが破棄され, 13の新しいアウトカムが追加された. 2回目の調査では69項目が破棄され, 31項目のアウトカムが最終のコンセンサス会議へと残された. 最終会議では, 事前に設定した選択基準 (閾値) に基づいて2回の検討と投票が行われ, 最終的に7つのコア・アウトカムが合意された (死亡, 特定の合併症, 日常生活動作能力, 創傷治癒, 神経障害性疼痛および掻痒感, 心理的ウェルビーイング, 学校または職場への復帰).
     【結論】このCOSには国際的に通用する普遍性があり, 熱傷領域で行われる介入試験において, プロトコル作成の前提になるものである. 今後の介入試験研究には, このCOSに準じた測定値または評価を含めることを推奨する.

症例
  • 山田 尚弘, 辻本 雄太, 蔵増 優, 根本 信仁, 武田 健一郎, 森野 一真, 福田 憲翁
    2023 年 49 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

     「RECELL®自家細胞採取・非培養細胞懸濁液作成キット」は, 自身の1cm2皮膚片から80cm2の熱傷創に上皮化効果をもたらす自家細胞懸濁液を作成するキットである. 熱傷の新たな治療として, 従来の標準的な植皮術にくらべ, より少ない採皮面積で同等の治療効果を得られると報告されている.
     今回, 熱性液体により前胸腹部を中心に熱傷面積15%のⅡ度熱傷を受傷した1歳女児に対して, 受傷から26日目に分層植皮術と自家細胞懸濁液を併用した外科的治療を行った. 標準的な植皮術と比較して採皮面積を32%縮小でき, 術後6日目には創閉鎖を達成した. 採皮部にも自家細胞懸濁液を使用し, 術後4日目でほぼ上皮化が完了した.
     小児熱傷の治療において, 自家細胞懸濁液の併用によって, 採皮面積の縮小と採皮創の上皮化促進が期待される.

  • 池田 憲祐, 海田 賢彦, 田中 佑也, 吉川 慧, 加藤 聡一郎, 井上 孝隆, 山口 芳裕
    2023 年 49 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

     血小板数の増加により偽性高カリウム (以下はK) 血症をきたすことがあるが, 熱傷患者に関する報告はない. 今回13%熱傷患者の加療中に血小板の増加により偽性高K血症を認めた症例を経験したので報告する.
     症例は20代, 男性. 腹部, 背部, 右上下肢に計13%のⅡ度熱傷を受傷した. 第3, 10, 17病日に手術を行い上皮化は良好であった. 血小板数は入院時27.6×104/µLであったが, 数日後より上昇し第16病日には71.7×104/µLになった. 一方, 血清K値は入院時4.2mEq/Lだったが, その後上昇し第14病日には5.4mEq/Lになった. Kの過剰投与や細胞内からの遊離, 排出障害は否定的であり, 第10, 17病日の血漿K値は血清より0.4, 0.6mEq/L低く, 血小板数の増加による偽性高K血症と診断した. 第31病日に自宅に退院した.
     熱傷患者が血小板数の増加を認めた際には偽性高K血症の可能性に留意する必要がある.

看護
  • 村中 沙織, 牧野 駿介, 牧野 夏子, 上村 修二
    2023 年 49 巻 1 号 p. 32-41
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 看護基礎教育課程における熱傷および外傷に関する教育内容の実態を明らかにすることである.
     2021年9月~11月, 日本看護系大学協議会2020年会員校265校を対象に看護基礎教育課程での熱傷および外傷教育の内容について個人属性, 授業内容, 教育するうえでの困難等で構成したWeb調査を実施した. 分析は, 量的項目は記述統計, 自由記述は質的記述的分析を行った.
     調査の結果49名の回答 (回収率18.5%) があり, 対象者の属性は, 看護学教員経験年数は15.7±8.7年, 臨床での看護師経験年数は11.3±7.5年, 臨床で熱傷・外傷看護の有経験者が31名 (63.3%) であった. 熱傷および外傷教育について, 授業が開講されていたのは60.0%程度だが単回の授業であることがうかがわれ, 実習対象者としていた学校は30.0%以下であった. 授業内容は「病態生理」「疫学」「気道・呼吸・循環・意識・体温管理」が多く取り上げられており, 医学的知識と生理学的評価や対応に関する内容を重要視していることが明らかとなった.
     教授するうえでの困難は熱傷および外傷で共通しており, 【病態そのものの複雑さ】【病態が複雑で多種多様な内容を教授することのむずかしさ】【学生が理解するための難易度の高さ】【臨床に則した授業展開のむずかしさ】【学習のためのリソース不足】【講義に対する学生のニーズが不明瞭】のカテゴリーが生成され, 専門性の高いケアが必要とされる背景から半数以上が困難を感じて授業を行っていることが明らかとなった.
     以上から, 熱傷および外傷に関して看護基礎教育課程で学ぶ機会は決して十分とはいえず, 実際の患者の回復過程に必要なケアについて十分に取り上げられていない可能性がうかがわれた. 今後の示唆として, この現状を前提とした卒後教育の検討が必要であり, 熱傷および外傷教育の充実化を図るべく, 診療ガイドライン等をふまえた教育の水準と内容の検討が望まれる.

地方会抄録
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