2026 年 52 巻 2 号 p. 103-107
広範な腹壁再建には, 筋膜を含む大腿筋膜張筋皮弁や前外側大腿皮弁などが一般に用いられる. 今回われわれは, 腹壁瘢痕ヘルニア部に熱傷を受傷し, 腹壁の全層欠損を生じたまれな症例を経験した. 症例は27歳, 男性. 電気溶接の仕事の際に着衣に燃え移り, 右胸腹部に8%TBSAの浅達性~深達性のⅡ度熱傷を受傷した. 既往歴として複数回の腹部手術歴があり, 右腹部は腹壁瘢痕ヘルニアとなっていた. 受傷後8日目の時点で菲薄化した腹壁瘢痕ヘルニア部を含め, Ⅲ度熱傷8%へと増悪を認め, 受傷後9日目にデブリードマン, 分層植皮術および有茎外側広筋皮弁による腹壁再建を施行した.術後経過は良好で, 腹壁瘢痕ヘルニアの再発もなく機能的, 整容的改善が得られた. 本症例は過去の外傷の影響から大腿筋膜張筋皮弁が選択できなかったため, 外側広筋皮弁を選択したが, 前外側大腿皮弁では厚みが不足すると考えられる場合も外側広筋皮弁は有用であると考えられた.