日本補完代替医療学会誌
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原著
ハトムギの抗腫瘍ならびに抗炎症作用に関する検討
鈴木 里芳徳田 春邦鈴木 信孝上馬塲許 鳳浩川端 豊慈樹太田 富久大竹 茂樹
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2013 年 10 巻 2 号 p. 75-85

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抄録

ハトムギ [Coix lachryma-jobi L. var. ma-yuen Stapf] の子実は,これまで伝統薬として,中国や日本で古くから利用され,抗腫瘍,抗肥満,抗糖尿など様々な機能を持つことが報告されている.われわれは以前よりハトムギの渋皮,薄皮,外殻の生物作用に着目してきた.今回,従来より漢方などで使われてきたハトムギの子実の熱水抽出エキス(ヨクイニン)を比較対象として,子実,渋皮,薄皮,外殻のすべての部分を含む熱水抽出エキス (CRD),ハトムギの有用成分である Monoolein と Trilinolein の抗腫瘍,抗炎症作用を検討した.ヒト由来癌細胞に対する細胞増殖抑制作用については,乳癌細胞 (MCF-7),肺癌細胞 (A-549),喉頭癌細胞 (Hep-2) を用いて評価した.結果は両エキス,Monoolein, Trilinolein ともに各癌細胞に対して弱い増殖抑制効果を認め,その作用はヨクイニンよりも CRD, Monoolein, Trilinolein の方がより強かった.また,発癌予防作用については,ヒトリンパ腫由来の Raji 細胞と発癌プロモーターである TPA (12-O-Tetradecanoylphorbol-13-acetete) を用いて,特異抗原発現能により評価した.結果は両エキス,Monoolein, Trilinolein ともに特異抗原発現を減少させた.また,ヨクイニンより CRD, Monoolein, Trilinolein がより強く発現を抑制した.一方,Monoolein は Trilinolein よりも強く抑制した.次に,ハトムギの抗炎症作用を検討するために,マウス皮膚上皮由来正常細胞に被検物質を作用させ,紫外線 (UVB) 照射前後ならびに加熱障害前後の細胞形態変化により評価した.結果は UVB 照射前後にかかわらずヨクイニンよりも CRD, Monoolein, Trilinolein が有意に細胞障害を抑制した.また,加熱障害前後については,ヨクイニンの方が CRD より細胞障害を抑制し,Monoolein は Trilinolein より有意に細胞障害を抑制した.以上のことから,子実以外にも渋皮,薄皮,外殻が有用であることが示唆された.さらに,Monoolein と Trilinolein は抗腫瘍,抗炎症を有することが示された.

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© 2013 日本補完代替医療学会
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