抄録
細胞内シグナル伝達系は細胞内の生化学反応を制御しており,その異常ががん化の原因であると考えられている.本研究では,複数のフィードバック反応経路を含む細胞内シグナル伝達系を,酵素の活性化と不活性化のサイクル反応系をノード,その制御関係をアークとする制御ネットワークとして定式化した.既に単一のフィードバック反応経路を含む場合,次数が混在している正もしくは負の制御ネットワークにおいて,双安定性が出現することが示されている.そこで,複数のフィードバック反応経路を含み,一次および二次反応機構が混在したシグナル伝達系を対象とし,フィードバック反応経路と反応次数が多安定性に及ぼす影響について解析した.