抄録
急性硬膜外血腫がcontrecoup injuryで生じたまれな1例を経験したので報告する.症例は55歳,女性.白宅アパート前に仰臥位で倒れているところを通行人に発見された.右後頭部のみ頭皮の挫創が認められた.頭部X線検査で右後頭骨の線状骨折が,頭部CT検査で右後頭部の急性硬膜外血腫と両側前頭部の急性硬膜外血腫が認められた.患者の意識障害が高度であったため,両者の開頭血腫除去術を施行した.まず,後頭部の硬膜外血腫除去を行い,続いて前頭部の血腫除去を行った.出血源は,右後頭部硬膜外血腫は骨折部直下の硬膜動脈で,両側前頭部硬膜外血腫は上矢状静脈洞であった.患者の術後経過は良好で,第17病日に退院,社会復帰した.急性硬膜外血腫がcontrecoup injuryで生じた例はまれで,われわれが文献を渉猟した限り4例の報告があるのみであった.