脳神経外科ジャーナル
Online ISSN : 2187-3100
Print ISSN : 0917-950X
ISSN-L : 0917-950X
症例報告
腫瘍内出血で発症し, 急速に意識障害をきたした小児anaplastic meningioma
梅村 武部山本 淳考高橋 麻由中野 良昭齋藤 健北川 雄大植田 邦裕宮岡 亮黒川 暢西澤 茂
著者情報
キーワード: adolescent, FIESTA, malignant, MRI, radiotherapy
ジャーナル フリー

2012 年 21 巻 10 号 p. 801-807

詳細
抄録

 髄膜腫は成人の原発性脳腫瘍として最も頻度が高いが, 頻度は少ないものの小児にも発生する. 一般的に良性で発育も緩徐な髄膜腫であるが, ごくまれに頭蓋内出血で発症する場合がある. 今回, 小児に発生し, 腫瘍内出血により急速に意識障害に至った悪性髄膜腫を経験したので報告する. 3歳4カ月の男児で, 感冒様症状で発症し, その後, 左上下肢麻痺が出現. 頭部MRIでは, 右前頭葉に腫瘍内出血を伴う不均一な信号を呈する巨大腫瘍性病変を認めた. 造影FIESTA法では, 腫瘍は, 大脳鎌に付着部を有し, 対側へ進展していた. 入院翌日に, 急速に症状が進行し, 翌々日に手術を施行. 腫瘍は, 硬膜付着部を含め全摘出した. 病理診断は, anaplastic meningioma (WHO grade III) の診断であった. しかしながら, 術後2カ月後の頭部MRIでは, 腫瘍再発所見を認めており, 再手術後, 放射線治療を導入した. 初回手術後より8カ月が経過したが, 明らかな神経脱落症状はなく, 頭部MRI上にても腫瘍再発は認めていない. 小児髄膜腫, 特に悪性髄膜腫においては, 腫瘍内出血で発症する場合があり, 正確な診断, 治療を含め時期を逸しない対応が必要である. 積極的な外科的治療後も, 厳重な頭部MRIによる経過観察を行い, 再発時には速やかに再手術あるいは放射線治療を行うことが重要である.

著者関連情報
© 2012 日本脳神経外科コングレス
前の記事 次の記事
feedback
Top