抄録
保存的治療に抵抗している有痛性の骨粗鬆症性圧迫骨折に対して, 椎体内に医療用骨セメントを注入する椎体形成術が, 1990年代から行われている. 本邦でも2011年よりバルーンを併用した椎体形成術が保険認可され, 急速に広まりつつある. 椎体形成術は低侵襲な治療方法ではあるが, 治療の成功には患者選択がきわめて重要で, その適応決定には保存的治療に抵抗する体動時痛の存在とmagnetic resonance imaging (MRI) での浮腫像の確認が必須である. 椎体形成術がシャム手術に比べて有用性を見出せないとするrandomized controlled trial (RCT) が発表され一時期議論となったが, 患者選択を厳密にしたRCTでは, 除痛効果, activity of daily living (ADL) 向上効果ともに保存的加療と比べて優ると報告され椎体形成術の有効性が証明された.
また, 骨セメントを注入せずに穴を開けるだけの穿孔術が, 圧潰の進行していない圧迫骨折に対して除痛効果を示すことがわかってきた. 穿孔術は, 術後の新規骨折の頻度は低いため, これまで椎体形成術の適応外とされていた急性期症例でも保存的加療に併用してよいと考えられる. ただし, 圧潰が進行している例や偽関節例では, 穿孔術の除痛効果は椎体形成術に比べ劣るため, 椎体形成術が適応となる. バルーンカイフォプラスティでは, セメントの漏れの頻度が椎体形成術に比して少ないといえるが, 椎体高の回復力や後弯復元力は術中の体位による影響を加味した検討が必要といえる.
今後, 適応の拡大, 注入物質の改良などにより椎体形成術のさらなる改善が見込まれ, 同治療が圧迫骨折に苦しむ患者の予後を改善する治療となることが期待される.