2019 年 28 巻 10 号 p. 614-620
日本の頭部外傷患者の高齢化は年々進行しており, われわれはこの超高齢社会を見据えた独自の治療方針を確立しなければならない. 急性硬膜下血腫や遅発性の症状増悪が高齢者頭部外傷には多くみられるが, 近年注目されているのは抗血栓薬内服患者の増加である. 日本頭部外傷データバンク/プロジェクト2015によると, 高齢者の31%が抗血栓薬を内服していた. さらにこれらの患者の特徴として, 低エネルギー外傷 (転倒・転落) による受傷機転が多く, 病態として出血性病変が多く, 経過としてはtalk & deteriorateの頻度が多いことがわかった. この状況への適切な対応は, 軽症であっても早期に頭部CTを撮影し, 出血性病変を認めた際は抗血栓薬の中和を考慮することである.