2021 年 30 巻 5 号 p. 365-373
転移性脳腫瘍の診療は, 放射線治療や薬物療法の目覚ましい発展により, 急速な変化を遂げつつある. 定位放射線治療では対応可能な転移数の上限が増え, また, 従来標準とされた摘出術後の全脳照射も定位・局所照射へと移行しつつある. 薬物療法では, 特定の遺伝子異常を有する非小細胞肺がん・メラノーマ・乳がんなどの脳転移に対する分子標的治療の有効性が報告され, 免疫チェックポイント阻害剤の有用性も大規模臨床試験にて確認された. そして, このような薬物療法の進歩は, がんゲノム医療の進展と足並みを揃えて前進している. 今後, これら種々の選択肢から総合的に治療方針を策定する, 多職種でのチーム医療の必要性が高まるであろう.